芸術と豊かさと

4月25日に朝来市、豊岡市の市長選挙が実施されました。朝来市は前市長の後継候補である藤岡氏が2倍以上の得票で当選した一方で、豊岡市は4期務めた現職が新人に数ポイント差で破れました。言ってみれば朝来は現状でOK、豊岡はNOということでしょう。

選挙はこれといった争点がなければ現職有利らしいので、朝来市で現職の後継者が圧勝したのは特に不思議ではありませんが、4期も務めた現職が僅差とはいえ破れるには相応の理由が必要です。しかも今回も無投票と思われていたのが直前に出馬した候補者に破れたわけですから。

その敗北の理由となった「これといった争点」が「演劇のまち豊岡」です。「演劇のまちの豊岡」を熱心に対外的に発信し、著名劇作家の平田オリザ氏の移住に続き、芸術文化観光専門職大学が今春開校したばかりで追風かと思いきや、「演劇のまちなんかいらない」に共感した市民の方がやや多いという結果になりました。

古今東西芸術を庇護してきたのは莫大な富を保有していた為政者なり貴族、商人あるいは企業なので、さすがに財政基盤の弱い一地方自治体が継続的に芸術をサポートし続けるのは無理がある気がします。そもそも演劇に関心のある人そのものが少ないのではないでしょうか。映画を見に行く人と比べてると観劇に行く人はかなり減ると思います。

高い知名度を誇る映画イベント「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」を主催していた夕張市は財政破綻してしまいました。その後市民有志や企業の協賛により存続していますが、演劇にそれだけのポテンシャルがあるのでしょうか。

コロナの影響とはいえ前回の演劇祭の経済効果が7500万円というインパクトのない数字だったのも一つの要因かもしれません。結局パトロン芸術というのは豊かさの結果であって手段ではないと思います。

もしかしたら関貫氏は演劇に興味のない市民層が多く、一部だけで盛り上がってるという豊岡の閉塞感を理解した上で入念に奇襲を準備していたのかもしれません。「演劇のまちづくり」が順風満帆に見えた中貝氏はまさか足元を救われるとは思っていなかったのでしょうね。

関貫氏にはぜひ地に足のついた「農業のまちづくり」をお願いしたいものです。

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